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産業用ロボットの導入には「労働安全衛生法」の遵守が必須!注意点も併せて解説!

昨今の人手不足や人件費高騰の対策として、産業用ロボットを導入する選択肢があります。

近年は安価なモデルも増え、導入に補助金を出す自治体もあるなど、経営が苦しい企業にとっては産業用ロボットは魅力的です。しかし、産業用ロボットを導入する場合は、遵守しなければならない法律や規則があります。

今回は産業用ロボットに関わる法律の「労働安全衛生法」と、具体的な規定である「労働安全衛生規則」について解説します。

産業用ロボットの運用に関する法律「労働安全衛生法(安衛法)」とは?

産業用ロボットの運用に関する法律「労働安全衛生法(安衛法)」とは?

労働安全衛生法は労働者の安全と衛生を確保するために定められたもので、略して「安衛法」とも呼ばれます。あらゆる業種において労働者を守るための基本ともいえる法律で、遵守しなければ法的罰則を受けます。

「労働安全衛生法」成立の背景

1955年(昭和30年)以降、日本は高度経済成長期を迎え、技術革新に伴い高度な設備が次々と導入されました。設備の高度化は生産性の向上につながりましたが、一方で労働災害の増加というマイナス面もありました。

そこで「職場における労働者の安全と健康の確保」と「快適な職場環境の形成」を眼目に1972年(昭和47年)に制定されたのが「労働安全衛生法」です。安衛法の効果は顕著で、制定以前には年間6,000人前後いた労災死亡者が、制定後には半分以下にまで減少しました。

参照:労働安全衛生法の30年と今後の課題

産業用ロボットに関する「労働安全衛生法」の内容

労働安全衛生法には「労働衛生3管理」と呼ばれる3つの基本原則があります。内容は以下のとおりです。

 

・作業環境管理

  作業環境中の有害因子について把握し、

  可能な限り良好な状態に管理しておくこと

 

・作業管理

  作業の効率化や安全化についてマニュアルを定め、

  適切に実施されているか管理・確認すること

 

・健康管理

  作業者の健康状態を確認・管理し、健康障害を未然に防いだり、

  回復措置を行ったりすること

産業用ロボットの運用を規定する省令「労働安全衛生規則(安衛則)」とは?

産業用ロボットの運用を規定する省令「労働安全衛生規則(安衛則)」とは?

労働安全衛生規則とは、労働安全衛生法に基づいて制定された省令です。略して「安衛則」とも呼ばれ、労働環境の安全や衛生の確保のための具体的な事項を定めています。

「労働安全衛生法」との違い

労働安全衛生規則は「省令」であるという点で、「法律」である労働安全衛生法から区別されます。違いは以下のとおりです。

 

・法律

  国会で制定され、強い法的拘束力を持つ規範

 

・省令

  法律や政令の委任に基づき、各省庁の大臣が発する命令

省令の制定は行政側によるものですが、法律や政令の委任を受けることで罰則規定を設けられます。したがって、法律ほどではありませんが、省令も遵守しなければなりません

 

労働安全衛生規則は労働安全衛生法を基に厚生労働省によって制定されており、産業用ロボットに関する具体的な条文があります。

産業用ロボットに関する「労働安全衛生規則」の条項

労働安全衛生規則内の産業用ロボットについての条文は以下のとおりです。

 

  • 第150条の3 「教示等に関する規定」
  • 第150条の4 「運転中の危険防止に関する規定」
  • 第150条の5 「検査等に関する規定」
  • 第151条   「点検に関する規定」

以下、各条文について解説します。

第150条の3 教示等に関する規定


産業用ロボットに動作を記録させることを「教示」または「ティーチング」と呼びます。

第150条の3の内容は以下のとおりです。

 

 ロボットの教示等の作業を行う際は、次の措置を講じること

 

  (一) 次の事項についての規定を定め、実施させること

   イ ロボットの操作の方法及び手順

   ロ 作業中のマニピュレータ(腕部)の速度

   ハ 複数の労働者に作業を行わせる場合における合図の方法

   ニ 異常時における措置

   ホ 異常時にロボットの運転を停止した後、再起動させるときの措置

   ヘ ロボットの不意の作動や誤操作による危険防止のための措置

  (二) 異常時にロボットを直ちに停止させるための措置をとること

 

  (三) ロボットのスイッチに作業中であることを表示する等、

     作業者以外の操作を防止する措置をとること

参照:労働安全衛生規則第150条の3(教示等)

教示等作業は産業用ロボットの可動範囲内で行われるため、誤作動や操作ミスによる危険があります。第150条の3では「教示の際のマニュアルや緊急停止の措置などを設定し、実施する」旨が定められている点は理解が必要です。

 

例外として、電源などのロボットの駆動源を遮断している際のみ、(一)~(二)の規定に従う必要はありません。

第150条の4 運転中の危険防止に関する規定


第150条の4の内容は以下のとおりです。

 

第150条の4 運転中の危険の防止

ロボットを運転する際、労働者に接触する恐れがある場合は、柵や囲いを設けるなど危険防止の措置をとること

 

 参照:労働安全衛生規則第150条の4(運転中の危険の防止)

第150条の4では「稼働中のロボットに接触する恐れがある場合は危険防止の措置をとる」旨を定めています。具体的な対応としては、ロボットと作業員との間に柵や囲いを設けたり、センサー類を設置したりすることが挙げられます。

 

例外として第150条の3の「教示等」や、第150条の5の「検査等」に該当する行為の最中は上記の対応は必要ありません。

第150条の5 検査等に関する規定


第150条の5の内容は以下のとおりです。

 

検査等に該当する行為

 ・検査

 ・修理

 ・調整(教示等に該当するものを除く)

 ・掃除

 ・給油

 ・上記の結果の確認

 

上記の作業中はロボットの運転を停止し、スイッチに錠をかけたり、作業中である旨を表示したりするなど、作業員以外の操作を防止する措置をとりましょう。またロボットの運転中に作業を行わねばならない場合は、第150条の3の「教示」等の場合と同様の措置を講じなければなりません。

 

ロボットの運転中に検査等の作業を行う際は、次の措置を講じること

 

 (一) 次の事項についての規定を定め、実施させること

   イ ロボットの操作の方法及び手順

   ロ 複数の労働者に作業を行わせる場合における合図の方法

   ハ 異常時における措置

   ニ 異常時にロボットの運転を停止した後、再起動させるときの措置

   ホ ロボットの不意の作動や誤操作による危険防止のための措置

 

 (二) 異常時にロボットを直ちに停止させるための措置をとること

 

 (三) ロボットのスイッチに作業中であることを表示する等、

    作業者以外の操作を防止する措置をとること

 

 参照:労働安全衛生規則第150条の5(検査等)

 

検査等作業も産業用ロボットの可動範囲内で行う場合には、誤作動や操作ミスによる危険があります。第150条の5では「検査の際のマニュアルや緊急停止の措置などを設定し、実施する」旨が定められています

第151条 点検に関する規定


第151条の内容は以下のとおりです。

ロボットの教示等の作業を行う際は、次の事項を点検し、異常があった場合は補修等の措置を講じること

 (一) 外部電線の被覆または外装の損傷の有無

 (二) マニピュレータの作動の異常の有無

 (三) 制動装置および非常停止装置の機能

 参照:労働安全衛生規則第151条(点検)

第151条では「教示の前にロボットの点検を行い、異常が見られた場合は補修を行う」旨が定められています。点検には特別教育を受けた者なら誰でも可能なものから、専門家でなければできないものもあるため確認が必要です。

後者は企業内に専門家が不在なら、外注しなければいけません。

規制緩和により出力80W未満のロボットは協働可能

2013年(平成25年)に第150条の4が改定され、定格出力が80W未満のロボットは、柵や囲いを設置せずに同じ空間で作業できるようになりました。条件に該当するものは「協働ロボット」と呼ばれ、従来の生産ラインを阻害せずに導入可能です。

規制緩和以後、安価で安全なロボットが多数開発され、中小企業にも急速に普及しました。産業用ロボットとは異なり、労働者に特別な資格も必要ない点も導入を後押ししています。

ただし協働ロボットでも、労働者に危険を及ぼさないかを確認する義務があることを覚えておきましょう。

参照:産業用ロボットに係る労働安全衛生規則第150条の4の施行通達の一部改正について

産業用ロボットに関わる労働者は特別教育が必要

産業用ロボットに関わる労働者は特別教育が必要

産業用ロボットに関する労働者への特別教育については、

労働安全衛生法第59条の3に規定があります。

労働安全衛生法第59条の3

事業者は、危険または有害な業務に労働者をつかせるときは、業務に関する安全または衛生のための特別の教育を行わなければならない

産業用ロボットに少しでも関わる可能性のある労働者は全員、特別教育を受講して資格を取得する必要があります。導入にあたり、ロボット本体以外にも教育費というコストが発生することは覚えておきましょう。

特別教育の内容について具体的に解説します。

特別教育は「教示」と「検査」の2種類ある

特別教育の内容は「安全衛生特別教育規程」によって定められており、「教示」と「検査」の業務に分けられています。労働者は自分が関わる業務の「学科」と「実技」の講習を所定の時間受講しなければいけません。

産業用ロボットの「教示」に係る特別教育

  科目 範囲 時間
学科 産業用ロボットに関する知識

・産業用ロボットの種類

・各部の機能および取扱方法

2時間
産業用ロボットの教示等の作業に関する知識

・教示等の作業方法

・教示等の作業の危険性

・関連する機械等との連動方法

4時間
関係法令 ・法、令および安衛則中の関係条項 1時間
実技 産業用ロボットの操作の方法 1時間
産業用ロボットの教示等の作業方法 2時間

参照:安全衛生特別教育規程第18条(産業用ロボツトの教示等の業務に係る特別教育)

「教示」はロボットに動作や位置、速度を記憶させる行為を指し、本体付近で行う必要がある危険を伴う業務です。特別教育では、「教示」を安全に行うための知識や技術を重点的に学びます

産業用ロボットの「検査」に係る特別教育

  科目 範囲 時間
学科 産業用ロボットに関する知識

・産業用ロボットの種類、制御方式、駆動方式

・各部の構造および機能、取扱方法

・制御部品の種類および特性

4時間
産業用ロボットの検査等の作業に関する知識

・検査等の作業方法

・教示等の作業の危険性

・関連する機械等との連動方法

4時間
関係法令 ・法、令および安衛則中の関係条項 1時間
実技 産業用ロボットの操作方法 1時間
産業用ロボットの教示等の作業方法 3時間

参照:安全衛生特別教育規程第19条(産業用ロボツトの検査等の業務に係る特別教育)

「検査」とは産業用ロボットの修理や調整、点検などメンテナンスに関する業務全般です。基本的に停止中に行われる業務ですが、内容によっては運転中に行う場合もあるため危険が伴います。

「検査」はロボットの構造や部品の特性への深い理解が必要なので、「教示」よりも長い講習時間が設定されています。

特別教育は全国各地で受講可能

産業用ロボットに関する特別教育は全国各地で受講できます。

具体的には各都道府県の「労働基準協会連合会」や「中央労働災害防止協会」(JISHA)の主催するものや、ロボットメーカーの講座が利用可能です。とくに導入するロボットのメーカーが決まっている場合は、開発元の講座を受講すれば、運用方法の理解も容易になるでしょう。

教育内容は法律で決まっているため、主催元でほとんど変わりませんが、開催の有無については注意が必要です。主催元によっては参加者が規定数に満たない場合、開催自体を中止する可能性もあるため、募集要項はよく確認しておきましょう。

ICS SAKABEでは九州・福岡で産業用ロボットの特別教育を開催しています。講習内容は「教示等コース」、「教示等+検査等コース」の2つがあり、いずれも修了証書の発行が可能です。

詳細が気になる人は以下リンクよりぜひ詳細を確認してみてください。

 

 

 

 

産業用ロボットによる事故が起きた場合の責任の所在は?

産業用ロボットによる事故が起きた場合の責任の所在は?

産業用ロボットの導入を検討している企業にとって、事故の際の責任の所在は気になる点だと思います。たとえ企業側が義務を果たしても事故の責任を負わねばならないなら、ロボットの導入に躊躇するかもしれません。

結論からいえば「ロボットによる事故の責任は、法律やルールを守らない人が負う」ことになります。事故が安全教育やマニュアルの不備によるものなら、事業主や企業側に責任が発生します。

反対に、労働者側がマニュアル等のルールを無視した結果として被害に遭ったなら、当人の自己責任です。

ただし現実の事故は誘発要因が複雑で、一概に責任の所在は特定できない場合もあります。重要なのは、事故の可能性を少しでも減らすために、各員が法律やルールを理解して守ろうとする姿勢です。

まとめ

まとめ

精度の高い作業を休みなく行える産業用ロボットは、企業全体の生産性だけでなく、労働者の作業環境の改善にも貢献します。しかし労働安全衛生法や関連法規への理解が欠如したまま導入すると、思わぬ事故につながる可能性があります。

とくに現場の労働者たちのほとんどは、法律に対する理解が乏しく、安全管理について主体的に行動することは困難です。産業用ロボットの効果を最大限引き出すためにも、企業側が率先して安全管理について周知を図っていきましょう

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